1/6「国民の宝」 1/13「WHOの医療評価」 1/20「世界一の医療費抑制策」 1/27「市場原理化の医療」 2/3「患者負担増える『混合診療』」
2/10「新世紀の医師憲章」 2/17「高齢社会危機と消費税」 3/2「薬漬け医療の真実」 3/9「国保があぶない」
3/16「誰のための介護保険」 3/23「医師の名義貸し」 3/30「医療報道」


「社会保障と公共事業」   上塚高弘(熊本県保険医協会会長)


 4月から診療報酬(医療の対価)が1%下がります。この結果1980(昭和55)年から現在までの診療報酬のアップ率はわずか2.8%にとどまりました。この間物価は約30%上がっています。こんなに抑制が必要なほど日本の医療費は高いのでしょうか。
 いいえ、国民医療費の対GDP(国内総生産)比は98年には7.5%で、OECD(経済協力開発機構)加盟国中でも18位と低いものでしたし、現在では21位と下がっています。医療のほか、福祉や年金も含めた社会保障費の国庫支出も、もともと先進国の中では低かったのですが、90年以降さらに引き下げられています。

 この時期、人口の高齢化に伴って他の先進国は社会保障費を増やしており、公的社会保障制度のない米国でさえ、日本より多くの予算を割いています。
 国民医療費が対GDP比で6.8%と日本より低かった英国は、ブレア首相が医療費予算を5年間で50%増額することを決めました。日本だけが、医療・福祉などの予算が抑えられているのです。
 これで平均寿命世界一、健康達成度総合評価世界一ですから、日本の医療関係者は頑張っているといえますが、劣悪な医療環境で日々綱渡りしていると言うのが実感で、いつ破綻してもおかしくない感じです。

 ところで、これだけ社会保障費を削って国の予算は何に使われているのでしょうか。外国と比較して極端に違うのは公共事業費の多さです。サミット7カ国のうち、日本の公共事業費は米、英、仏、独、伊、加の6カ国の合計よりはるかに多いのです。
 その公共事業に環境を破壊する無駄な事業が多いことも知られています。大切な国家予算、適切に使って欲しいですね。
H16年2月24日
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