抗議声明


 はじめに、今回の産科手術で亡くなられた患者さん並びにご遺族に心よりお悔やみ申し上げます。

 平成18年2月18日に福島県立大野病院の産婦人科医師、加藤克彦氏が業務上過失致死ならびに医師法違反の容疑で逮捕された。私たち熊本県保険医協会は、誤った医学的判断および医師法解釈による不当な行為と考え、遺憾の意を表明すると共に強く抗議する。

 今回の症例のように、子宮全摘出となる程の癒着した前置胎盤を予知することは医学的に困難であり、決して犯罪という範疇のものではないと言わざるを得ない。
 また、医師法21条に違反した容疑も逮捕の理由とされているが、「異常死」の概念や定義には曖昧な点が多く、今回の結果は医学的に合併症として合理的に説明できる死亡であり、重大な医療過誤が存在するとは思われない。

 地域の医療事情により、産婦人科医1人で分娩・手術を担ってきた結果が、今回の結末とすれば、断じて受け入れることはできない。
 このような不当逮捕が許されるならば、産婦人科医師の減少、労働環境の悪化、一層の産婦人科医師の減少と悪循環が加速し、地域医療は崩壊の道をたどることとなる。他科においても同様の事態が起これば、結果として萎縮診療となり国民医療の後退をもたらすことになりかねない。

 我々は改めて、不当な逮捕に対し強く抗議するとともに、加藤医師の一日も早い釈放を願うとともに、医師法21条の「異常死」の明確な定義付けと医療に伴い発生する無過失補償制度の創設について広く国民的議論を行うべきであると考える。



H18年3月14日
熊本県保険医協会