会長談話

日歯汚職事件に思う


 日本歯科医師会臼田会長らが下村健中央社会保険医療協議会(中医協)委員らに働きかけた贈収賄事件は、われわれにとって衝撃的であった。

 臼田会長らの行為は、余りにも短絡的、反社会的である。それでも、それが崩壊寸前の歯科医療界を少しでも活性化し、ひいては国民にいい歯科医療を提供したいとの思いから出たものであろうことは十分推察できる。一方収賄側の1人下村健は、元社会保険庁長官で健保連副会長(事件後解任)であるが、国民への配慮などは全く関係なく、単に私腹を肥やしただけであり、まさに唾棄すべきである。かかる人物によって、今まで正当な医療費引き上げが阻止されてきたかと思うと、残念でならない。

 もともと健保連という組織は組合員の健康を守ることを目的としたはずである。その為には医療費抑制を図る国に対し、医療側と共闘して国に医療費の引き上げを迫ることがあってもいい。それが一貫して医療費抑制に回っていたということは、健保連の名を借りて国の方針を貫いていたに過ぎず、このような天下りはもう止めにしなくてはならない。

 医療費の審議の行われる中医協は、支払い側と医療側の他に中立のはずの公益側がいるが、これは厚労省から選ばれた御用学者であることが多く、数の上で医療側の意見は通らないシステムになっている。今回の贈収賄劇は、まともでは意見が通らない状況での焦りから生まれたものであろう。

 今回の事件の教訓として、われわれは中医協での審議過程の公開を是非とも求めるべきである。
 長年にわたりいかに診療報酬が抑えられてきたか、それが世界の中でいかに異様なことであるのか、国民に適切な医療を提供するためにはどれだけの診療報酬の引き上げが必要であるかなどを、中医協の場で、あるいは日常活動の中で、国民に明らかにしていくことが今後のわれわれのとるべき道である。


平成16年4月
熊本県保険医協会
会長 上塚 高弘