会長談話

医師不足問題の早急な解決を望む



  過疎地の医師不足は、遂に牛深市民病院の事務長の自殺という痛ましい事態まで引き起こしてしまった。
 医師の偏在は今に始まったことではないが、ここに来て深刻になってきたのは、研修医制度の発足により指導医確保のため大学が派遣先の病院から医師を引き上げたことと、医師数が標準に達しない病院へのペナルティの解釈が急に変わったことに起因している。ペナルティとは、今までは医師か看護師が標準の八〇%を越していれば基本診療料や特掲診療料の施設基準の届出が出来ていたのが、ともに八〇%を越さなければならないことになったことをいう(四月改定で一部改善)。

 どうしても医師を確保しなければならない地方病院では、名義を借りたり、多額の研究費を払ったりしたのであろう。大学側でも、国から支払われる研修医手当ては、一人当たりにすれば十万にもならないところが多く、何らかの収入を図らなければならない事情にあった。

 「名義貸し」などはあってはならないことは当然であるが、ただ禁止するだけでは問題の解決にならない。根本的には十分な研修医手当てや、全般的な診療報酬の引き上げがなされるべきであるが、さし当たっては次のようなことが考慮されるべきであろう。
  1. 国公立の大学病院はその地域の過疎地への医師派遣に責任を持ち、国はその費用を補助すること。
  2. 卒業後、一定期間過疎地に勤務する意思のある学生には奨学金を考慮すること。
  3. 実際の医師派遣に関しては、大学と都道府県の担当者で構成する委員会で検討すること。
  4. 当分の間、過疎地で標準を満たすことが困難と思われる病院に関しては、診療報酬上のペナルティを課さないこと。
 なによりも、医師を待ち望んでいる過疎地の患者さんのために、早急に問題を解決して欲しいものである。


平成16年3月
熊本県保険医協会
会長 上塚 高弘